▼ "kamejikomi" ishikawasyuzoujyou
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 今や健康志向で多くの方が愛飲する『もろみ酢(総称)』は、石川酒造場の石
川信夫社長の開発により生まれたもの。昔は酒造所は養豚も行っていて、醪を搾
った後の粕を豚の飼料として再利用していました。その豚の健康状態から『醪は
身体に良い』ということが解り開発のヒントとなったようです。余談ですが、醪
を食べて育った豚は、赤身が多く柔らかくなります。沖縄にラフテー、ソーキ、
ミミガーなど豚肉料理が多いのもこのためでしょうか?。          
 さて、話をメインディッシュに移しますと、石川酒造場は現在『沖縄唯一の甕
仕込み』を行う酒造所です。500年と言われる泡盛の歴史、伝来した蒸留技術
と泡盛の原形を今に残す伝統製法がこの『甕仕込み』。日本の焼酎の源流である
泡盛の神髄ともいえる造りです。                     

 醪(モロミ)を活性化させる為、撹拌(か
くはん)をしているところです。一回の仕込
みで使う約1トンの原料米を水に浸し、蒸し
た後に黒麹菌を加えて、製麹機で繁殖させて
黒麹が出来上がります。そしてその黒麹と酵
母と水を加えて出来たのが、この写真の醪で
す。これを甕で行うから『甕仕込み』と言う
わけです。じっくりと発酵させた醪は、常圧
で蒸留すると泡盛が出来上がります。   
▼ Photo.01
泡盛ができるまで

 石川酒造の醪室。一石(180リットル)甕
が立ち並び、醪が元気に発酵していました。
室内は黒麹の発するクエン酸の香りが充満し
ています。この一斗甕は、完全なハンドメイ
ドらしく、大きさや形状に若干の差があるよ
うで、中には目視で明らかにわかるモノも…
 柱に掲げられた『沖縄唯一の甕仕込み』の
看板が、私には、石川酒造のみなさんに誇り
を与えているような気がしました。    
▼ Photo.02
この甕で仕込んでます!

 さて似ている写真ですが、こちらは2階の
熟成室です。この暗く静かな部屋で『玉友』
達が静かに眠りについています。     
 遠近の差に見えますが手前の5つの甕まで
が一石甕で、奥はそれより小さな甕。こちら
は石川社長自らが管理するかなりの年代物だ
そうです。中身が気になって気になって仕方
ありませんでしたが、『飲ませて下さい』と
言えず、いや、眠りの妨げにならないよう静
かに部屋を後にしました。        
▼ Photo.03
古酒の寝息

 こちらは熟成室の通路を挟んだ向いの部屋
です。いつ頃まで使用してたものかは解りま
せんが、かなりいい味が出ている直火蒸留釜
がありました。おそらくは戦前のモノでしょ
うが、釜の上部が木桶をひっくりかえしたよ
うな造りになっているんですね。というか、
木製であることには驚かされました。   
 その回りに無数に置かれた様々な甕も、当
時のモノなのでしょうが、こう見ると、甕だ
けは今でも形を変えていないようですね。 
▼ Photo.04
タイムスリップ

 これは石川酒造場の壁画です。ガジュマル
の木が描かれていますが、沖縄ではガジュマ
ルの古木には、妖精キジムナーが宿っている
と信じられていて、このキジムナーは人に幸
福をもたらす妖精です。イタズラもするが親
切で、魚の目玉が好きな人気者。常に人々と
のふれあいを持ち多くの民話にもなっていて
『人々が集まってくるように』との願いを込
めて描かれたようです。玉友ファンの方は、
すでにキジムナーに呼ばれているのかも… 
▼ Photo.05
キジムナーの招き


  ▼あとがき/石川酒造場を訪問して…
 
 初めて甕仕込みの風景を、目の当たりにできた今回の訪問で、泡盛の500年
以上も受け継がれてきた泡盛のルーツに触れられた気がしました。酒造所内の柱
には、『沖縄県唯一の甕仕込み』と看板が掲げられているのを見て、『なぜ外へ
のアピールでないのだろうか?』と思いましたが、今思えば、その看板が社内で
泡盛造りに携わる方々へ『誇りを持ちなさい…』と、訴えかけていたようにも思
えます。                                
 甕仕込みがもたらす熟成効果、特にその熟成速度は科学的にも証明されたもの
ですが、驚くべき点は、泡盛の伝来時から甕が使用されていたことでしょう。当
然、当時に瓶やステンレスは存在しておりませんが、先人達の知恵と歴史に東洋
文化の神秘性を感じました。                       
 この度の訪問では、ご多忙のなかご親切に取材に応じて下さいました、企画室
次長の屋良昌樹様、誠にありがとうございました。             


みなさんも『泡盛の歴史』に触れてみませんか?
500年前から伝えられた 甕仕込み・甕貯蔵

海を渡ってやってきた泡盛のロマンが いま甦ります…


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